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第5話 享楽に酔う

مؤلف: 倉谷みこと
last update تاريخ النشر: 2026-03-11 16:10:00

相沢さんの黒い瞳に、野獣のような剣呑な光を認めて、もう逃げられないと確信した。恐怖を感じながら、心のどこかで楽しみにしている自分もいる。

「あ……あいざわさん。おねがい……イかせて……」

もう本当に限界で、僕は羞恥心をかなぐり捨てて懇願した。

「ふふっ、いいぜ。でも、まだ挿れてあげない」

相沢さんは意地悪くそう言うと、僕の足の間に頭を埋めた。

「え……? ……あ゛っ!」

突然、しびれるような衝撃が、下半身から頭の先に走った。

相沢さんが、僕自身の先に唇を這わせたからだ。次第に舌を絡め、舐め上げ、僕を追い詰める。

「ぐ、あ゛っ……あいざわさん、も、……ぅあ……む、りぃ……!」

僕が白旗を上げると、相沢さんは僕自身を咥えた。

「あ゛あ゛ぁ……っ!」

そのぬくもりと感触に、僕は相沢さんの口内へと欲望を吐き出した。

「ん゛っ……!」

相沢さんのくぐもった声が聞こえた。

視線だけを下半身に向けると、僕を咥えたままの相沢さんと目が合った。

「相沢さん……は、離して……ください」

頼んでみたものの、彼は一向に離してくれない。それどころか、口内に出したものを飲み下しているのか、彼の舌が裏筋をリズミカルに刺激する。敏感すぎる自身には強すぎて、痛みすら感じ始める。

「ん゛ぁっ!? ちょっ……あ、相沢……さん! 飲ま、ないで……!」

必死に懇願するけれど、少しも聞いてはくれない。

「相沢さ、あ゛っ……!」

僕から引き離そうと、彼の頭に触れた瞬間だった。ものすごい勢いで吸われ、僕の体はビクリと跳ねた。まるで、欲望の残滓を吸い取ろうとしているみたいだ。

「あ゛……だ、め……! 吸っちゃ、だめぇ……!」

言葉とは裏腹に、自身はまた硬くなっていく。

(イッたばかりなのに、どうして……?)

やめさせたくて、彼の頭に触れている手に力を入れようとする。けれど、さわさわと彼の髪を触るくらいしかできない。

しばらくして、顔を上げた相沢さんは、

「ごちそうさま」

と、舌なめずりをする。

語尾にハートマークでもついているような言い方に、僕は急に恥ずかしくなった。

「飲んじゃだめって言ったのに……」

「あんたが、俺の口の中に出すからだよ」

「そう……だとしても、飲み込むなんて――!」

「興奮しちゃう?」

ねっとりとたずねられて、僕は言葉に窮した。

正直なところ、先ほどの光景と感触を扇情的だと感じていた。

「ふふっ、また勃ってる。やっぱり、体は正直だな」

相沢さんは、僕自身に軽く口づけをした。

「ひゃっ、あ……! あいざわ、さん……それ以上は……!」

強すぎる快楽から逃げようとして、声をかける。

けれど、彼は上目遣いで僕を見て、

「やめるとでも思ってる?」

と、静かに告げた。

瞬間、のどを締めつけるような感覚がした。

低く妖艶な彼の声音に、どくりと心臓が跳ねる。恐怖とも期待ともつかない感情が、ぞわりと肌を粟立てる。

「まだ、拒否する理性が残ってるんだ? 幸せになりたいって言ってたのに。往生際が悪い子には、お仕置きが必要かな?」

彼は、ゆらりと上体を起こして、言葉をかみしめるように告げる。その黒い瞳には、僕の反応を楽しむ余裕みたいなものはなかった。あるのは、獰猛な獣のような飢えた光だけ。

「もしかして、期待でもしてるの? そんなにビクつかせて。佳晴さんって、意外と変態なんだ?」

言いながら、相沢さんの顔が僕の顔に近づいてくる。

「そ、んなこと……ない」

事実を指摘されて、僕は彼から顔をそらした。羞恥心で語尾が小さくなっていく。

「そんな事、あるだろ!」

静かに吠えると、相沢さんは僕の顎をつかんで強引に自分の方へと向かせる。

「ん゛ぅ!」

荒々しい口づけをして、舌で僕の口内を蹂躙していく。

「ん゛……ぅ、ふぁ……は……ん゛ん……」

先ほどの甘いキスの比ではないくらい、舌使いが激しい。吐息は自然に漏れ、次第に頭がクラクラしてくる。

(……このまま、キスされっぱなしだったら……ヤバい、かも……)

ぼんやりとした危機感が、頭の中によぎる。けれど、すぐに溶けてなくなり、どうでもよくなる。

「ん゛っ!?」

突然、胸の突起を摘まれたかと思うと、自身に緩い刺激が与えられる。彼が、自分の膝を、僕自身にぐりぐりと擦りつけてくる。

(ぁ……ヤバ……上も下も気持ちいい……)

悦楽を教え込まれ、このまま溺れてしまいたいとさえ思えてくる。

しばらくして、相沢さんの唇は、僕を解放した。

「ぁ……」

名残惜しくて、無意識に声が出てしまった。

「エッロい顔。そんなに気持ちよかった?」

そうたずねられ、僕は無言でうなずく。

「それはよかった。じゃあ、もっと気持ちよくさせてあげる」

微笑む相沢さん。上気した頬が、彼の色気を倍増させている。

期待に胸を膨らませていると、彼は僕の首筋に口づけた。唇を這わせながら、時折、ちろちろと舌で弄る。

「はぁ、ん……ふっ……ぅあ……」

鼻にかかったような甘い声が、僕の口から止めどなく溢れる。

(僕……こんな声、出せるんだ……)

自分の甘い嬌声を聞きながら、どこか他人事のように思った。自分でも知らなかった一面が、相沢さんによって暴かれる。

「……あんたの声、すっげーそそる。もっと聴かせて」

そう言うと、相沢さんは僕の胸の突起を口に含んだ。

「ぅあ゛っ……!」

知らなかった快感に、僕は声を上げてしまう。

片方は舌先で舐め転がされ、もう片方は指先でカリカリと擦られる。それが気持ちよくて、もどかしくて、どうしようもないくらいに悶えてしまった。

「あ゛ぁ……っ……にゃ……! ら、めぇ……! おかし、くなるぅ……!」

言葉が、勝手に口をついて出る。彼の頭に手を添えて、もっととせがんでいるような、抱きしめるような形になる。こんな暴力的な快楽は、生まれて初めてだった。

僕の体は、どこもかしこも敏感になってしまった。彼がほんの少し触れただけで、甘いしびれが走り、過剰に反応してしまう。その度に、嬌声を上げ、自身がひくひくと戦慄き、腹の奥がぞくりと疼く。

(……中、触ってほしい……)

そんな淫らな欲が、頭をもたげる。

「う、ぁ……はっ……あいざわ、さん……そこ、ばっかり……やぁ……」

他にも触れてほしいと、言外に告げる。

僕のもっと奥――より深い部分に触れてほしい。相沢さんと一つになりたい。そう思ってしまった。

「ん? じゃあ、どうしてほしい?」

僕の胸から顔を上げた相沢さんが、小首をかしげる。

「ぇ……?」

すぐに触ってもらえない事に、僕は、情けない声を出してしまった。

「佳晴さん、教えて」

早くとうながす彼は、少し息が上がっているのか、言葉の端々に吐息が混ざっている。

「ぁ……えっと……ここ、触って……ほしい」

僕は、自分の両足を広げて、触れてほしい場所を示した。消えたはずの羞恥心が、言葉で伝える事にブレーキをかけた。

「エッロ……。あんた、マジでノンケだったのかよ? ははっ! いいぜ。いーっぱい触って、ぐっちゃぐちゃにしてやるよ!」

そう言うと、相沢さんは、僕の窄まりに彼自身を充てがう。

「ぁ……はぁ……んっ」

ようやく、一番触れてほしい場所に触れてもらえる。そう思うと、気持ちが昂ぶる。腹の奥が、蠢くように疼く。

「挿《い》れるよ」

低く告げると、相沢さんがゆっくりと僕の中に挿入《はい》ってきた。

「ん゛っ……! んん……」

慣れない質量に、思わずまぶたをぎゅっと閉じる。中から押し広げられる感覚と痛みが、彼に貫かれている事を思い知らせる。けれど、不思議と恐怖は感じなかった。昨日の今日だからなのか、それとも僕が彼を求めているからなのか、理由はわからない。

「きつ……。佳晴さん、息吐いて、力抜いて。大丈夫だから」

と、相沢さんに頭をなでられる。

すると、無意識に強張っていた体から、自然と力が抜けた。

「あ゛……ぅ……なに、これ……気持ちいぃ……」

とろけてしまいそうなほどの恍惚感が、僕の頭の中を支配する。

「あ、ちぃ……佳晴さんの中で溶けそう……」

気持ちよさそうな相沢さんの声に、僕は自然と口角を上げていた。

「動くよ」

そう言うと、相沢さんは僕の返事を待たずにゆっくりと腰を動かす。

「う……ふっ……は、ぅ……ん゛っ……」

緩い抽挿が繰り返され、僕の口からリズミカルに声が漏れ出る。

「あんた……咥え方、上手すぎ……! 俺の形、覚えてるみてえ。昨日の今日で、覚えたのか……よ!」

言い放ちざま、相沢さんは奥に強く押し込んだ。

「あ゛っ……! あ゛、あぁ……ふか、す、ぎ……!」

のどを締められたように苦しくなり、上手く息ができない。なのに、頭の中は、気持ちよさでいっぱいになる。

「まだまだ、こんなもんじゃないぜ。佳晴さんの声、もっと聞きたい。やらしいとこ、もっと感じたい。もっとよがって。もっと、俺で感じて……もっと、もっと!」

言いながら、抽挿を速める。

次第に、肌がぶつかる乾いた音と卑猥な水音が、僕の耳に届く。

「あ゛ぁ、は……ふぐぅ、かはっ! は、げしい……!」

声が止まらない。快楽の波もとどまることを知らず、僕を翻弄する。息をするのもままならず、甘い酸欠状態が、僕を襲った。

「はぁ……っ、ほんっとに、佳晴さんの体、よすぎ。腰、止まんねえ!」

相沢さんは、酔いしれるように告げる。

抽挿が繰り返される度、彼自身が脈打ち、より硬くなるのを感じていた。

(あ……やばい……。僕も……腰、勝手に動く……)

喘ぎながら、自分の体がコントロールできないことを自覚した。このまま、彼との悦楽に溺れたい。彼と一緒に果てたい。本能が、そう叫んでいる。

相沢さんが繰り返す抽挿、僕が上げる嬌声、結合部分から聞こえる卑猥な水音。それだけが、この異様な熱気が漂う部屋に響いている。僕達は、互いに快楽を貪り合うだけの獣になっていた。

「お゛ぉ……あ゛っあ、ぁ……だ、だめ……あい、ざわさん! また……!」

何度目かわからない限界を迎えそうになり、僕はどうにか相沢さんに伝える。

「まだイくなよ。俺も、そう少しでイキそ……だから!」

と、相沢さんが眉間にしわを寄せた。

「ひぎぃっ……! ぐぅっ……い……いっしょ、に……イキ、たい……!」

「俺も……佳晴さんの中に出したい」

「お゛、く……だして……! あいざわ、さん……で、いっぱい、にぃ……! ぁ、らめ……イ゛ッちゃう……!」

「イけ……! イッちゃえ……! 頭ぶっ飛んだまま、イけっ!」

最奥をえぐられる。

「あ゛っ、い、イぐイくイく……イ゛、ぐっ!」

命じられるまま、僕は欲望を吐き出して果てた。

「く……締まるっ……! ――っ!」

ほぼ同時に、相沢さんも僕の中に吐き出した。

腹の中が、じんわりと温かい。頭の中が、真っ白に溶けていく。

「……んっ!」

相沢さん自身が、僕の中から抜かれる瞬間、僕は小さく声を上げてしまった。

「かわいい声、出しちゃって。まだ足りない?」

なんて、相沢さんにたずねられて、僕は一気に恥ずかしくなった。それ以上に淫らな姿を見せたというのに。

「足りないわけじゃ、ないですけど……。まだ、落ち着かなくて……」

僕がそう言うと、相沢さんは僕の横に寝転がった。

「それじゃあ、落ち着くまで、こうしててあげる」

と、優しく頭をなでられる。

それがとても心地よくて、快楽とは別の温かな気持ちが胸の中に広がっていく。

(幸せって、こんな感じなのかな? ……こんな事、自然にできるなんて、モテるだろうな……)

ふと、僕はそんな事を思った。

悔しくないと言えば、嘘になるかもしれない。でも、自分には、到底、真似できないと負けを認めてしまった。

「ん? どうしたの?」

僕が見つめていたからだろう。相沢さんが、優しく微笑んでたずねてきた。

「あ、いや……終わった後、いつも、こういう事してるんですか?」

そんな問いが、自然と口をついて出た。

「ああ、まあね。たとえ一回だけだとしても、俺との事がいい思い出になればいいな、なんてね」

自己満足だけれどと、相沢さんははにかんだ。

確かに、最初は最悪だと思っていたけれど、今となってはいい経験をしたのかもしれないなんて思っている自分がいる。

「何? もしかして、俺に惚れた?」

妖艶な笑みで、相沢さんが聞いてくる。

そんなんじゃないと言いながら、僕は彼の胸に頭を埋めた。

「ただ、いやに慣れてるなと思って……」

恥ずかしさと気まずさで、ぽつりとつぶやく。

「……あの、さ。そんな、かわいい反応されると、襲いたくなるんだけど?」

苦笑するような甘い声で告げられ、僕の心臓と下半身がびくりと跳ねた。

「……して、ください」

彼の胸に頭を埋めたまま、僕は消え入りそうな声で告げた。

「じゃあ、遠慮なく。……悪いけど、優しくできねえから」

低く宣言すると、相沢さんは僕の首筋に口づける。

言葉とは裏腹に、落とされたキスはとても優しいものだった。

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